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2010年11月 アーカイブ

2010年11月16日

ワタシがマリーンズを好きになった理由(日本一に寄せて)

それは1995年のこと。いっしょうけんめい追いかけてきた音楽というカルチャーがどうにもこうにもツマらなく思えてきたときに、イチローがさっそうと登場。少年時代にすこしだけハマった野球というものに再度目覚めた。

90年代の球界には、80年代までの球界風情、パンチパーマとセカンドバッグな、昭和の香りがまだ残っており、それとの対比でイチローがキラキラと輝く新しいムーブメントに見えた。

ただ、選手ではなくチーム全体で見れば、やはりどこもかしこも昭和な香りがして、思い入れようにもそのことが強烈なネックとなった。その中では、千葉ロッテマリーンズがそういう昭和臭からもっとも遠いところにいると感じた(イチロー属するオリックスブルーウェーブも昭和臭弱めだったが神戸ということで地理的に遠かったことが敗因)。

千葉ロッテマリーンズのファンになろう。

バレンタインがいて、伊良部、ヒルマン、小宮山の三本柱。初芝、堀、フリオ・フランコ。ピンストライプのホーム用ユニと、グレーのビジター用ユニ。それらすべてが、ずいぶんソフィスティケートされているように見えた。

ここでかるく「ソフィスティケート」というコトバを使ってみた。もうすこしコトバを継ぎ足すと、歴史のしがらみなく、過去から自由で、その分ちょっと軽薄短小で、カラっと明るく、そしてなによりも若々しい。そんなイメージ。

だからオリオンズ・川崎的なるものとは無関係に見ていたのだ。よく「川崎時代からのファンですか?」と質問されるが、そのときには毅然と「いえ、幕張以後なんです」と答えることにしている。

2010年、千葉ロッテマリーンズ、日本一。05年も格別だが、今回も感無量である。ある意味では今回のほうが強くココロが揺さぶられた。

話はかわるが、ワタシのいちばん好きなコトバは「快活」。すべては快活でなければならない。ActiveやPositiveに、もうひとつ、Comfortableの意味が入ったコトバ、快活。

吉田拓郎は《ビートルズが教えてくれた》という曲で歌う―――「もっと陽気であっていいじゃないか」と「ビートルズが教えてくれた」。

そう。ビートルズはそういう価値観を世界中にまき散らしたんだ。そして、明るく自由な方法論で、明るく自由な方角へ、世界を導いたんだ(ここを分かっていない評論家が多すぎる)。

まずは笑ってフィールドに立とうじゃないか、いい球が来れば初球か打っていいじゃないか、場合によってはノースリーから振っていいじゃないか、8回終了4点ビハインドでも下を向くんじゃない、でも最後の最後はバットを極限まで短くもって渾身の力で速球を振り抜き、前進守備のセンターを越える予想外の長打でいっきに三塁まで駈け抜けるんだ・・・そして最後は、応援団といっしょに肩を組んで、笑顔で、大きな声で歌うんだ。

誤解のないように言っておけば、昭和の野球、眉間にしわを寄せてコツコツと攻めていく野球も大好きだ。ただし、もうここまでくれば、野球は人生観そのもの。ワタシ自身が「快活」に生きることを選んでしまったのだから、野球にもそれを求めさせてもらうよ。

繰り返すが―――歴史のしがらみなく、過去から自由で、その分ちょっと軽薄短小で、カラっと明るく、そしてなによりも若々しい―――そんなことをいちばんたいせつに考える人生を歩むことに決めた。だから千葉ロッテマリーンズなんだ。だからマリーンズの奔放な若者たちの闊達な活躍にシビれるんだ。

西岡がメジャーに行くという。西岡は今季のMVPだと思うし、その初本塁打を富山で観たという因縁もあり、マリーンズの中で、もっとも思い入れがある選手である。しかしワタシは引き留めたいとは思わない。

西岡の後も、また(まだ見ぬ?)快活な若者が出てきてその穴を埋めてくれる。そして適切な新陳代謝が行われ、さらに快活なマリーンズになり、眉間にしわを寄せる野球を高らかにあざ笑う。

それが、マリーンズ。ワタシが好きな、マリーンズ。―――ワタシがマリーンズを好きになった理由。

(ス)

2010年11月19日

表彰選手は記名投票で

MVP、新人王、ベストナイン、ゴールデングラブ。
これら表彰選手が発表される際、ひそかに楽しみにしているのは、
投票結果よりもむしろその詳細である。
ちなみに今年のベストナイン投票結果詳細はこちらで、
ゴールデングラブ賞投票結果詳細はこちらです。

楽しみにしている理由は、毎回、
必ず「ユニーク」な投票をされる記者さんが散見されるからである。
今年もいたよ。ベストナインから見ていこう。
今年のユニーク大賞は、パの一塁、小谷野(F)に1票。
そりゃ、稀に守ったことはあるだろうけどさ。球界一の名サードに失礼。
他にもいくつか挙げてみよう。
パの捕手、上本(L)に1票。パの外野、荻野(M)に1票。
セの一塁、ホワイトセル(S)に1票。セの外野、赤松(C)に1票。

規定打席以下でベストナインになったことって、過去にあるのかな?

ゴールデングラブには、もっとわかりやすい「ユニーク」がある。
セの外野、ラミレス(G)に1票、スレッジ(F)に1票。
「ゴールデン」という形容詞の概念が違うのかもしれないね。
まさか金本にも票が……と怖くなったが、さすがにそれはなかった。

毎年、こういう「ユニーク」を見るたびに思うのは、
「けしからん!」という憤りではなくて、
単純に「投票理由を聞いてみたい」ということである。
我々は自由な言論が許される社会に生きている。
誰がどんな意思表明をし、どんな見識を世に問おうと自由だ。
したがって「ラミレスは名外野手だ!」と主張する野球記者がいたって構わない。
むしろ、我々の常識に揺さぶりをかけるそのような見識こそ、
詳しく知りたいと思うのが人情ではないだろうか。

この種の表彰選手は記名投票にして「誰が誰に投票したか」を公表したらいいと思う。
発表後にネットで公開してもいいし、
翌日の紙面で「我が社の記者はこう投票した」と各紙が掲載すればいい。
いったい、そこにどんな不都合があるのだろう。
毎日球場へ通い、選手やスタッフと直接会話し、特等席で試合を見ている野球記者たちが、
日々の仕事で培った野球観を世に問う絶好の機会ではないだろうか。
読者にとっても、トータルの投票結果とは別に、
「自分の野球観と近い記者」を発見する楽しみができる。
これからのメディアは、そういう個別性が大切だと思うのですがね。

仮に「誰に投票したかがバレたら取材活動に支障が出る」のであれば、
そんな取材者との関係は一刻も早く解消したほうがいい。
考えてもみよ。競馬記者は毎週、出走馬に印をつけているのである。
彼らにも「担当厩舎」があるし、関係者との付き合いもあるだろう。
それはそれとして、競馬記者は自分の意思で印をつけることによって、
自らの競馬観を毎週、世に問うているわけだ。それで支障があるだろうか。

ちなみにワタシは昨日、ツイッター上の前予想で
「MVPは攝津と浅尾」とつぶやき、見事、撃沈しました。
セットアッパーW受賞という初の現象こそ、現在のプロ野球のリアル。
そんな野球観に基づいた「中穴狙い」だったのですが……。

(オースギ)

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