なんどか酒席でご一緒させていただいている関係上、なんとなく書きにくいところもあるのですが、近鉄バファローズ、西本幸雄関連の書籍でおなじみの佐野正幸さんの最新作、『パ・リーグどん底時代~激動の昭和48年』はそうとう面白い。
その昭和48年とはこんな時代でした。
・前後期の2シーズン制導入
・太平洋クラブ、日拓ホームの新規参入
・ロッテに金田正一新監督、大暴れ
・野村克也プレーイングマネージャーの南海優勝
・阪急が江川卓を強行指名
・1年で日拓ホームが日本ハムに球団譲渡
読んだ感想として、現在のパ・リーグの繁栄から比べると確かに「どん底」な年だったわけですが、我が愛するロッテ球団がとても人気があった年であることも同時によく分かります。
金田正一のスター性にくわえて、本拠地を持たない「ジプシー球団」への判官びいき、最多勝成田文夫、完全試合の八木沢荘六の活躍などもあり、前年(31万人)からなんと三倍超(95万人)の観客動員を成し遂げたというエポックな年だったわけです。
さて、現在。「パ・リーグの繁栄」と書きましたが、本当に繁栄なわけです。昭和48年に比べると。
北海道から福岡まで、日本全国にひろがるパ・リーグ。ダルビッシュ、岩隈、杉内、田中将大と、世界に名を知らしめる好投手が目白おしのパ・リーグ。DHや予告先発、クライマックスシリーズなど新機軸をどんどん打ち出し成功を収めるパ・リーグ。
ただ、この本を読んで気づかされるのは、この繁栄が、「どん底」時代におけるさまざまな選手、フロント、ファンの一途で健気な想いの上に成り立っているということです。
フロントと監督の確執が取りざたされ、シーズン前に監督解任が決まり、フロントの一部の女性が暗躍しているという噂の我が千葉ロッテ。なにをやってくれてるんだ?
まず歴史を知ること、「どん底」時代を知ることから始まると思う。歴史の中に埋もれつつあるパ・リーグへの一途で健気な想いの上にあぐらをかくことは許されない。
すでに一部懇意にしていただいた千葉ロッテ球団の関係者も、いまはもういない。でも匿名で球団事務所にこの本を送りつけてやろうかしら。
長崎出版より。税抜きで1600円。
(ス)