こんにちはスージー鈴木です。最近は「野球音楽」に飽き足らず「野球落語」を作っています。まだコーナーにするほどではありませんので、この場を借りて発表させていただきます。まずは古典の名作『芝浜』(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%9D%E6%B5%9C)の改作、題して『初芝浜』をお楽しみください。
『初芝浜』
千葉ロッテの初芝清兵衛は酒におぼれ、守備に身が入らぬ日々が続く。マリンの風の影響もあり、エラーばかり。ある朝早く、女房に叩き起こされ、守備の練習でもしろと言われ、嫌々ながら千葉マリンに向かう。
しかし時間が早過ぎたため球場がまだ開いていない。 誰も居ない幕張の浜で顔を洗って煙管を吹かしていると、そこで偶然に金色のグラブを見つける。このグラブがべらぼうに使いやすく、その日ファインプレーを連発。ライト席からの「清兵衛!清兵衛!」の大コール。盛り上がった清兵衛は、仲間である堀幸一や小宮山悟を呼んで浮かれ気分で大酒を呑む。
翌日、二日酔いで起きた清兵衛に女房、なんでこんなに泥酔しているのか、とおかんむり。 清兵衛は拾った使いやすい魔法のグラブの件を躍起になって訴えるが、女房は、そんなものは知らない、と言う。 焦った清兵衛は家中を引っ繰り返してグラブを探すが、何処にも無い。
清兵衛は愕然として、ついにグラブの件を夢と諦める。以来、清兵衛は酒を断ち、心を入れ替えて真剣に守備に精を出す。
普通のグラブで懸命に守り、守備も安定し、結果、そのシーズン、清兵衛はなんと「ゴールデングラブ賞」を獲得。その上、守備の名人と言われた広岡達朗に「君こそ"平成の広岡"だ!」とこの上ない賛辞を言われる。そしてその年の大晦日の夜、清兵衛は妻に対してその献身をねぎらい、頭を下げる。
ここで、女房は清兵衛に例のグラブを見せ、告白をはじめる。
あの日、夫から拾ったグラブを見せられた妻は困惑した。拾ったものを勝手に使えば当時でも窃盗罪にあたる。長屋の大家と相談した結果、大家はグラブを拾得物として役所に届け、妻は夫の大酔に乗じて「金色のグラブなぞ最初から拾ってない」と言い切る事にした。時が経っても遂に落とし主が現れなかったため、役所から拾い主の清兵衛にグラブが下げ渡されたのであった。
この真相を知った清兵衛はしかし、妻の背信を責めることはなく、道を踏外しそうになった自分を助け、真人間へと立直らせてくれた妻の機転に強く感謝する。
妻は懸命に頑張ってきた夫の労をねぎらい、久し振りに酒でも、と勧める。はじめは拒んだ清兵衛だったが、やがておずおずと杯を手にする。「うん、そうだな、じゃあ、呑むとするか」
しかし清兵衛、思いとどまり杯を置く。「よそう。ゴールデングラブ賞が夢になるといけねぇし、そもそも酒を飲むと広岡さんに怒られる」(完)
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※次回は『三枚起請』(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E6%9E%9A%E8%B5%B7%E8%AB%8B)の改作『四枚新庄』を発表します。お楽しみに。
(ス)